動静間て無く、閒忙忘れず、忽然として漆桶脱去、□地一聲して、現成公案を突出せば、頭頭顕露、物物全て彰れ、左之右之、源に逢わずということ無し。拈じ来たって放ち去るに、妙用に非ざるは無し〔非ざるは莫し〕。

 いつもこのことを忘れずに座禅をしていると、不意に底知れぬ無明の迷いからのがれさり、思わず大声を上げ、目の前の公案を突き破るでしょう。こうなると、全てのものがすっかりかわり、あれもこれもみんな根源から見ることが出来るようになり、持ってこようが振り払おうが何をしても素晴らしい働きが出てこないということは有りません。

[注]
【間と閒】
閒は間の本字。門を閉じても月の明かりがもれる「すきま」を表す。

【□地一聲 ( □ の中に力)】
大悟の機を言う。地は助辞。見性悟道の時に発する心音底をいう。 [ □ の中に力 ]は祖録では一時関として用いる。